Note to Self

2021.1.16~ 日々の読書の記録。

【読書録】『女性のいない民主主義』

政治および政治学においていかに女性という存在が蔑ろにされてきたかについて書かれている『女性のいない民主主義』という本について。

女性のいない民主主義 (岩波新書)

女性のいない民主主義 (岩波新書)

 

 

🔑キーワード

この本で出てきたワードで他の分野でも応用できそうだな思ったワードは「クリティカル・マス(臨界質量/critical mass)」

クリティカル・マス(臨界質量)とは、もともとは核物理学の用語であり、その質量を超えると連鎖的に核分裂反応が起きる最少の質量を指す。政治におけるクリティカル・マスは、その値を上回れば女性が本来の力を発揮できるようになるような、議員の女性比率を示す概念である。(p31)

クリティカル・マスとなるのに何%が必要なのかには諸説あるし、実際それぞれの環境によって異なるから一概には言えないだろうけど、30%と言われることが多い。

1981年、アメリカで女性として初めて最高裁判事に指名されたサンドラ・デイ・オコナー判事も、女性が一人だったときは、女性としてどのように判断するのか、また、女性は判事に適しているのか(主語が大きい)など、大きすぎる看板を背負わされることが非常にプレッシャーになっていたらしいけれど、1993年にルース・ベイダ―・ギンズバーグ判事(Notorious RBG!!!)が2人目の女性判事に任命されたことで、肩の荷が下りたというエピソードを思い出した。

 

そしてキーワード2つ目、フェミニスト福祉国家論」(p110-111)。

ダイアン・セインズベリー(Daine Sainsbury)による議論。

【男性稼ぎ主モデル/male breadwinner model】

家族の代表者としての男性に対して提供される。
→男性が家族全員の社会保険料を払えば、その家族に対して受給資格が与えられる。
→シングルマザーやワーキングマザーは恩恵が少ない

 【個人モデル/individual model】

特定の家族像は前提とされず、夫と妻は対等な存在として仕事で収入を得て、家事や育児において協力することが想定される。
→自らの資格で社会保険制度に加入し、自らの拠出に基づいて給付を受ける。ケアを社会化する。

 

💡書いてあることと考えたこと

男性稼ぎ主モデルと少子化が結び付くとどうなるか(p135)

男性稼ぎ主モデルの福祉国家=男女の性役割規範に基づいて、所得保障を行う。

BUT 脱工業化に伴って女性の労働参加が拡大すると、制度が機能しなくなる
  ⇓
専業主婦と子供を養える男性が減り、結婚・出産と同時に労働市場から退出させられるリスクが高まる女性が増える。
  ⇓
仕事と育児の両立がかなわない環境のため、女性は結婚と出産を回避
  ⇓
少子高齢化が進む

 

 ヨーロッパなど、少子化に直面した政府は男女共同参画ジェンダー平等の理念とは別に、出生率の回復を目指してケアの社会化を進め、仕事と育児の両立支援を進めた。

 

一方日本は、

少子化対策が講じられてきたが、政策的な変化は鈍い。
少子高齢化は男性稼ぎ主モデルの帰結であるに加え、持続させる原因にもなるから(子育て世代の割合が減り、余計にケアを社会化しにくくなる)。日本は育児支援が充実する前に高齢化が進行したため、政策転換がより難しくなった。
 
希望を込めて参考例として挙げられているフランス。
元々は保守主義的な福祉レジームが強かったものの、
女性の就労支援 + 様々な家族モデルに対して支援を行う「自由選択」という手法で家族政策を進め、多様なアクターの合意形成が可能となり、福祉国家の再編ができた(p139-140)
 
PACSとかもこれに含まれてる?夫婦別姓の法整備さえ遅々として進まない日本を見てるとあまり希望は持てないけれど。
 

あとは、政治学にあまり明るくないので、勉強になった部分はこのあたり。

  • マスメディアの役割

マスメディアの世論に対する影響には、二つの側面がある。まず、マスメディアの報道が政治争点への有権者の意見を変化させることは少ないとされる(限定効果論)。これに対して、マスメディアの影響力は、特定の争点への注目を集めるアジェンダ設定機能や、ある問題を特定の角度から切り取るフレーミング効果などを通じて発揮されるという見解があるがある(強化効果論)。(p48-49)

 そうなると、主に男性によって担われ、今なお男性的価値観が根強いメディア業界を見れば女性の問題不可視化されるよな、という。これは自明だった。

 

政治家になるためのキャリアパス(地方議員や議員秘書、官僚、労働組合など)を通る候補者は圧倒的に男性が多く、女性候補はスポーツ選手やタレントのような知名度の高い人が多い
➡︎政党が女性候補者をリクルートしてこなかった
 
  • 社会的亀裂の理論(p178)
各国の政党システムはそれぞれの最も重要な社会的亀裂(=階級、人種、宗教、言語など)を反映したものとなる。
アメリカやイギリスの第一波フェミニズム参政権の獲得には成功したものの、国政政党は生み出さなかった。=生み出すほどの社会的亀裂を生まなかった。
→各国の政党システムは男性の率いる政党によって占められることになった
例外的に女性の首相や大統領が誕生した場合も、それは男性の政治指導者の親族であることが少なくない
政党は女性の候補者を締め出すゲートキーパー(門番)としての役割を果たしてきた
一般的に平等主義的な思考が強い性性とは女性を積極的に起用する傾向があると考えられてきた。だが日本で55年体制下で最大野党だった社会党は、長い間女性候補の擁立に消極的だった。支持母体である労働組合の組織的基盤が理由とされる
 
この辺の議論は腑に落ちた。第二派フェミニズムも60年代の公民権運動とか左派系運動が結局男性によって牛耳られていたことへの反動から生まれてきたという認識だったけど、その動きを国政政党にまで結び付けられるか否かって、重要な分岐点になるんだという気づきがあった。
 
【政党中心の制度と候補者中心の制度】(p192)
有権者が候補者個人に投票する制度の下では、候補者の選挙運動による支持者の獲得が当選の鍵を握るため、政党指導部が選挙運動で果たす役割は小さくなる。これに対して、有権者が政党に投票する制度の下では、候補者が政党の公認を得ない限り当選できないため、正当指導部の影響絵力は強くなり、選挙結果が候補者の選挙運動に依存する度合いは小さくなる。

 小選挙区制:候補者中心

拘束名簿式の比例代表制:政党中心

一般に比例代表制は拘束名簿式の場合女性議員の割合が高くなりやすい。
⇔非拘束名簿式の場合は候補者個人の選挙行動も重要なため、女性が不利になる影響が大きくなりがち
日本の1994年の選挙制度改革では中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に。
これは政治腐敗に対処するためのものだったが、結果的に副産物として女性の候補者が増えた。
 
  • クオータ制
クオータ制とひとことでいっても運用方法はいろいろある。
リザーブ議席(reserved seats)
議席の一定割合を女性に限定し、残りの議席を男女双方に割り当てる。
 
・政党クオータ(political party quatas)
政党が候補者の一定割合を自発的に女性と男性に割り当てる仕組み。
比例代表制を採用している国で広く用いられる。
議会下院において、何らかのジェンダー・クオータ制を導入している国は100カ国を超える。上院や地方議会も含めれば、その数は130カ国程度に上る。(p198)

 この本が出版されたのが2019年。こんなに多いんだと純粋に驚いた。クオータ制について知ってはいたけどちゃんと勉強したことなかったな、と。

2018年5月に日本でも「候補者男女均等法(日本版パリテ法)」で、候補者を男女同数に近づける努力を正当に求めている(罰則はない)。(p202)

女性も一枚岩ではないし、マッチョな考え方をする人もいるので、ただ数が増えればいいわけではないけれど、クリティカル・マスの考え方もあることだし、女性議員が増えて結果的に多様な視点からの議論が進んで、それが政策に反映されればいいなと思う。

 

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どんな形式でまとめるのが後で見返したときにわかりやすいのか模索中。

少なくともここに書くことで考えが整理されている感じはする。続くといいな。